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こんにちは、パーソナルトレーナー・理学療法士の村田育子です。
現在「脚長差(左右の足の長さが違う)」について解説中(シリーズ目次)。

本日は「大腿骨転子部(だいたいこつてんしぶ)骨折による骨接合術にて脚長差は生じるのか?」というテーマで解説していきたいと思います。
前回・前々回は、「大腿骨頸部骨折」についてでした。
今日は「大腿骨転子部骨折」です(^^)/
・大腿骨転子部を骨折された方
・ご家族が大腿骨転子部骨折で手術された方
・術後の脚の長さの左右差が気になる方
に是非読んで頂きたい頂きたい内容です。
【目次】
1.大腿骨転子部骨折の手術で脚長差は生じるのか?
大腿骨転子部骨折とは
大腿骨頚部よりもちょっと下の部分の骨折を言います。

ここは大腿骨頸部と違い血流がある部位なのでしっかり整復すれば骨がくっつくことが期待できます。
なので人工骨頭置換術ではなく骨接合術が選択されます。
理学療法士として遭遇するそのほとんどは
CHS(コンプレッションヒップスクリュー)とγ‐nail(ガンマネイル)です。
さてこの「大腿骨転子部骨折の手術で脚長差が生じるのか?」という疑問についてですが、
答え「はYES」となります。
2.CHS、γ‐nailで脚長差が生じる理由
ではなぜCHSやγ‐nailで脚長差が生じるのでしょうか。
その前にCHSとγ‐nailについて軽く説明します。
「CHS」とは「Compression Hip Screw」の略で、こんな手術です↓

プレートを当てて、スクリュー(ネジ)で固定しています。
γ‐nailはこんな手術です↓

骨の髄に大きな釘を刺して、それをスクリュー(ネジ)で固定しています。
使う金具は違えども、どちらも「ズレた骨折部を整復しネジで固定する」のは同じです。
一度形ある物が壊れると、例え手術で復元したとしてもぴったりと元の形には戻る訳ではないので
そもそも論、この手術の時点で脚長差が生じる可能性はあります。
長くなる可能性も、短くなる可能性もあります。
(大腿部骨幹部骨折と同じメカニズムです → こちらの記事参照)
それに加え、CHSやγ‐nailではもう一つ、脚長差が生じる理由があります。
それはCHSもγ‐nailも
「体重を乗せるとスクリューが動く」
という構造を持ち合わせていることにあります。
「スクリューが動く」というのは
下図の矢印の方向にある程度スライドすることを許されているということです↓

これを「スライディング機構」と言います。
このスライディング機構は
骨折部どおしが互いにめり込む(嵌入)ことを許しています↓(青矢印)

このように骨折部がめり込むことで
・骨折部がより圧着して噛み合う
・スクリューが変な方向にズレるの(カットアウト)を予防する
というメリットがあります。
ありがたいですね~
これがスクリューのスライドの経過です↓

・・・。これは結構ズレ過ぎかもですよね。
さて、このようにスクリューがスライドして骨折部がめり込むと、脚の長さはどうなるでしょうか?
短くなりますよね。
めり込んだ分、短くなります。
これは前回記事の「頚部短縮」と同じメカニズムです。
(前回記事はこちら)
CHSやγ‐nailはそもそもこの頚部短縮を前提とした造りになっています。
「術後の荷重ストレスに伴って多少脚が短くなることを前提とした構造」
とも言えます。
これがCHSやγ‐nailで脚長差が生じる理由の一つです。
※ちなみにスクリューのスライドはたくさん起きれば良いという訳ではないです。たくさんスライドする=不安定、です。頚部短縮する分、中・小殿筋はたるみ筋発揮しにくくもなります。スクリューの根元が飛び出て軟部組織に当たると痛くなることもあります。脚もその分短くなりますしね。
3.まとめ
・大腿骨転子部骨折にはCHSやγ‐nailが施行されることが多い
・どちらの術式もスクリューのスライディング機構を持ち合わせている
・スライディング機構は術後のある程度の頚部短縮を許容している
・頸部短縮は脚長差(短くなる)の原因となる
お読み頂きありがとうございました。
この記事が誰かの身体のトラブルの解決の糸口となりますように。
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